この熱い魂を伝えたいんや


この熱い魂を伝えたいんや / 上田正樹とサウス・トゥ・サウス

この熱い魂を伝えたいんや / 上田正樹とサウス・トゥ・サウス大阪の「ミナミ」から、ブルースの本場であるアメリカの「南部」へ、という思いで名付けられた「サウス・トゥ・サウス」は、上田正樹が見出したミュージシャンたちで編成された選りすぐりのバンドだ。 そのスタジオ・デビュー盤といえる『ぼちぼちいこか』に続いて1975年に発表されたライブ・アルバム。時代に先駆けた多目的ホールとしてオープンしてまもない芦屋ルナ・ホールでの収録である。
 
『この熱い魂を伝えたいんや』とはいかにも大げさにひびくタイトルであるが、それが決して大げさとは思えないほどに、中身のサウンドは熱い。サウス・トゥ・サウスの, ライブ・バンドとしての魅力を存分に伝える録音である。
 
オープニングに続く「ウ・プ・パ・ドゥ」はオリジナル曲ではないが、シンプルなワン・コードの繰り返しが、会場のグルーヴをどんどん加速させる。しつように繰り返す藤井裕の重たいベースのうねりと、パワーに満ちた正木五郎のドラムスが生み出すリズムの推進力はいうまでもないが、それにもまして目を見張らせるのはバンド最年少の中西康晴のエレクトリック・ピアノだ。「日本一転がるピアニスト」と呼ばれた彼の抜群のリズム感と、完成されたコード・ワーク。当時まだ十七歳。
 
そして主役の上田正樹。数百人の観衆をがっちりつかんで離さない。「朝までやるかー!」のコール・アンド・レスポンスを聴いていると、ほんとうに何時間も、何日も、この興奮が続くのではないかと思わされるほどだ。音程やリズムが正確という意味で「上手いシンガー」は数あれども、音程もリズムも抜群に正確で、その上に、歌声だけで観客を踊らせることのできるシンガーという点では、少なくとも日本では彼の右に出る人はいないだろう。
 
そしてこのアルバムでも楽曲の面白さは忘れてはいない。「むかでの錦三」。強きをくじき、女には優しい「極道お兄さん」の歌。当時、同じイベントで共演した東京のミュージシャンたちをして、「あんな歌、どうやったら書けるんだ」と唖然たらしめた一曲だ。

なにわブルースの名盤
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この熱い魂を伝えたいんや / 上田正樹とサウス・トゥ・サウス
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