カイロプラクティック・ファンク No.1


カイロプラクティック・ファンク No.1 / ザ・たこさん

なにわブルースの中堅、ザ・たこさんの6枚目のアルバム。前作までは比較的凝った作り込みをしていたので録音にも時間がかかっていたということだが、本作は一気呵成に録音し、仕上がったそうだ。版元は「こんなに簡単にできるならもっと作ってもらわなきゃ」とぼやいてみせた。  ライブが良いバンドもスタジオ盤を聴くとつまらない、というのは遠い過去の話だろうか。本作はザ・たこさんのライブに釘付けになったことのある方には真っ先にお聴きいただきたい。収録曲も、この何年かのライブで育て上げられた「お豆ポンポンポン」や、ワンコードでぐいぐい押してゆく「肩腰、背中」、ライブでおなじみの「ネギ畑」など、ザ・たこさんのグルーヴを目一杯味わえるものばかり。最後の「新・ナイスミドルのテーマ」はおなじみの名曲にオオサカズのユルい音を被せた新しい試み。
 
かっちりとベースのメロディを組み立ててゆく前任者・脇本総一郎(仮名)とは対照的に、ワンコードやスリーコードのシンプルな楽曲で、クールなマサ☆吉永のドラムまでを煽りに煽るオカウチポテトのベースが抜群に生きている。グルーヴの気持ち良さでは日本広しといえどもぶっちぎり、山口しんじのカッティングの引き出しの多さにも驚嘆。そして悲しき怪人・安藤八主博のリアリティあふれる、ダンサブルなボーカル。
 
「肩、腰、背中、体が動かん・・・」いったいどう考えれば良いのか、この歌詞。こんなものを歌にするなどという発想がすでにあっぱれ、なにわブルース。2017年春にトヨタ自動車のCMに採用された「カッコイイから大丈夫」は、長年ライブでMCをつとめてきたキチュウくんにインスパイアされたとか。
 
「お豆ポンポンポン」も「歌詞」と言って良いのか、まったく意味不明というかナンセンスというか、小さな子供が歌いそうな歌だが、そんな歌がなぜこんなにもカッコ良いブルースになるのか。ザ・たこさんの謎は深まるばかり。しかも最近のライブではこの曲が「突撃!となりの女風呂」に代わってクライマックスを受け持つこともあるのも謎。
 
短いインストゥルメンタル曲の「ネギ畑」に象徴されるように、ただグルーヴに乗せて演奏するだけで気持ち良いザ・たこさんを満喫できる一枚。

なにわブルースの名盤
ぼちぼちいこか / 上田正樹と有山淳司
この熱い魂を伝えたいんや / 上田正樹とサウス・トゥ・サウス
COMPLETE BEST 1974-1997 / 憂歌団Ari−ya−mania / 有山じゅんじ
カイロプラクティック・ファンク NO.1 / ザ・たこさん